罪状 草に飽きた羊殺人、羊人間化、屁

殺傷人数 約33人

攻撃性能☆2 残虐性☆1 執拗さ☆2 不死性☆3

罪人ランク C

ニュージーランド最大級の農地を持つ、オールドフィールド家。ヒツジを育て、毛や肉を売り続けていた。
5代目当主・アンガスは昔ながらのやり方を一新し、スマート農業を始めた。ベンチャーの科学者と協力し、遺伝子組み換えに力を入れていた。
そして生まれたのがオールドフィールド種。成長が早く、多くの毛量肉量を収穫できるヒツジであった。

【保護団体との確執】
この遺伝子実験は拷問的で、ヒツジを虐待していると噂になっていた。それを聞きつけた保護団体の構成員は、証拠を掴むため農場に潜入していた。
事実施設では、生きたままヒツジを解体する、開きにして生命維持装置に繋げ、体液だけを延々と採取する、などの実験が行われていた。
構成員は研究施設から、廃棄サンプルを奪取することに成功する。しかしトラブルでカプセルが割れると、サンプルは近くの団体員に飛び掛かった。
これを皮切りに、農場のヒツジは殺人毛玉へと置き換わっていった。

【種類】
□オールドフィールド廃棄幼体
農場にある、ずさんな廃棄穴に投棄されるはずの幼体。
カプセルに詰められ、到底生きているようには見えない。毛もなく、しわだらけの弱弱しい見た目からは想像できない生命力を持つ。
肉食で、一度嚙みつけば引きちぎるまで離さない。足も立たないが、這いずって相当な距離を移動する。
弱弱しい鳴き声は、他のヒツジたちの注意を引く。近寄ってきた優しいヒツジは噛みつかれ、同じく凶暴化する。
今回の事件は、この失敗作の不安定な変異細胞によるものと思われる。

□オールドフィールド完成体
実験の末に完成した、正統なオールドフィールド種。
酸鼻を極めた実験など露と知らぬような、純白の柔らかな毛並みが特徴。凶暴性も皆無であり、人を襲わない。
ただし感染したヒツジを呼び集めることができる、女王でもある。

□感染ヒツジ
元々農場にいた、ロムニー種などが変異細胞に侵されたもの。
見た目は変わらないため、正常なヒツジに紛れていると見分けがつかない。
感染すると豪胆になり、人間が大声を出したり腕を広げて威嚇しても逃げない。逆に、低い唸り声を上げながら突進してくる。
首筋を積極的に狙ってくる性質がある。大きいもので80~100㎏もある。そんなものが飛び掛かってくるので、押し倒されると跳ね除けるのは至難の業。
嚙む力も強く、人間の足を骨ごと簡単に切断できる。

□ヒツジ人間
感染ヒツジに噛まれ、生き残った人間が変異する。
手や足など末端に近い部位を噛まれた場合は、進行が遅い。首や腹など致命的な部分を損傷した場合は、そのまま死亡するか、気絶している間に急速に変異が進むかに分かれる。
変異には段階があるので、分けて解説する。

・感染初期
理性は残っており、通常時と変わらない。
時々活舌がおかしくなり「メエェェ」と発声してしまうことがある。次第にヒツジに対して仲間意識が芽生えたり、またヒツジに対して欲情することがある。とりわけ正統なオールドフィールド種は、垂涎ものの美女であるようだ。
傷跡付近では変異が早く、特に手足は三本指になり蹄が発生する。傷跡からは白い羊毛が生えだしてくる。
変異が始まると感染ヒツジから仲間と認識され、攻撃されることはなくなる。

・感染中期
初期の終わりに、急激な変化が訪れる。
全身の皮膚が張り裂けそうに痛み、実際裂けた部分からは羊毛がどんどん生えてくる。逆に人間の毛髪は抜け落ちていく。
手足は完全に蹄付きのものに置き換わる。
瞳孔は横向きの楕円形になり、上の前歯が抜け落ちる。ヒツジの特徴が色濃く出てくるようになる。
顔面は内側から膨れ上がる羊毛がこぶとなり、耳は三角形に伸びていくなど醜い有様になる。
もう人語は話せないが、理解することはできる様子。説得などで若干の時間稼ぎが可能。手が変化しているので、複雑な道具は持てないが、握って使える程度の道具は扱える。

・感染末期
骨格が完全に変異し、残った理性も消え去る。
一応人の形を残していた顔は、口が前にせり出して縦長に変形する。足は逆間接に変わる。
身体自体が大きくなっており、腰が曲がっているが2m程度はあるようだ。
武器はないものの、強靭な肉体は腕の一振りで大人を吹き飛ばす威力がある。

【対策】
ヒツジ人間は的が大きく、取り立てて武器がないため倒しやすい相手だろう。耐久性は人間同様で、銃があれば簡単に葬れる。また人間の急所はそのまま継承しており、秘孔をつけば昏倒させることも可能。皮膚も固くはなく、女性でも箸を思い切り刺せば貫ける。
問題は感染ヒツジの群れである。
数の暴力とはこのことで、数百のもこもこが死に物狂いで噛みに来る。ヒツジの足の速さは時速10㎞前後。人間の走りより少し遅いが、体力はヒツジが上なので、無謀だろう。
立てこもるのも木製のドア程度は破るので、場所を選びたい。

しかし弱点が2つある。
1つは火。
羊毛はものすごく発火しやすく、一瞬で火が回って焼死する。(実際のウールは燃えにくいようだが、変異細胞で変わったんだろう)

またヒツジたちは常にブーブー屁をこいている。それが数百ともなれば、可燃性のメタンガスが充満する。そこへ火種を投げ入れれば、一網打尽にできる。
賢い読者は、「閉所でないとガス充満しないだろ」とお考えのことだろう。
そこで弱点その2。牧羊犬の出番である。
感染ヒツジはともかく、変異したヒツジ人間も牧羊犬に逆らえない。その場に座らせたり、誘導したりすることができる。ニュージーランドに行くなら牧羊スキルは習得しておきたい。

ひと噛みされただけで迎えてしまう、おぞましいヒツジ変化の過程を描いたが、光明はある。
オールドフィールド研究所では、ワクチンも研究されていた。
羊膜液(羊水)採取専用の実験ヒツジがおり、その羊膜液を経口摂取するのだ。
骨格が変形した者も一瞬で元に戻る威力。後遺症なのか動作がヒツジっぽくなって、群れを作ったりするが些細な問題だろう。
ああよかった。両足羊肉になったものはいなかったんですね。